海外のスタートアップや企業で、日本に進出したい企業は少なくない。
日本のマーケットは大きく、魅力があると考えられているからである。
一方、これらの海外企業には、日本進出が難しいということも認識されている。
この記事は、その理由について述べた関連記事のリサーチと
スタートアップ関係者へのヒアリングを通してまとめたものである。
海外企業の日本進出が難しい理由を大きく3つにカテゴライズすると
以下の通りになる。
海外スタートアップ日本進出の難しさ・その理由
1.文化、特にビジネス習慣の違い
2.言葉の壁
3.手続きの複雑さ
1.文化・ビジネス習慣の違い
日本には日本特有のビジネス習慣がある。
トップダウンで仕事を進める進め方もまだ根強く残っているし、
決断に時間をかけるため、海外と比較した際、仕事のスピード感が遅いと感じられることもしかり。裏を返せば、慎重で事前の事業計画が入念で、失敗のリスクを少なくするのは良い点かもしれないが。
ビジネスマナーの違いもある。
法律が違うこともある。
例えば、メディアの放送業界で言えば、「放送基準法」が各国違うため、日本のコンテンツ(=商品)が海外では放送できない=販売不可になることもある。
筆者は放送コンテンツを海外に販売する仕事に9年携わったため、世界のメディア相手にジャパンコンテンツを販売する際には、必ず相手国の法律・規則を把握していなければならなかった。
日頃「常識」だと思っていたことが、国が違えばそうでなくなることも多い。
マーケット調査から、国民性や文化の把握、ビジネスマナーの違いなどを知っておくことはとても重要なことである。
2.言葉の壁
日本は単一民族で島国である。日本語以外の言語を生活で使う必要性が低い。
さらに、言語が理由の一つでもあると考えるが、海外に出る人が少ない国民である。
よって、実用英語ができる日本人は国民のわずか7%と言われている。
ビジネスになると、高い専門性が伴い、英語のコミュニケーションスキルは一層高いレベルを求められることから、ビジネスシーンで通用する英語力を備えた人材は、わずか一握りの人になってしまう。
文化や習慣を理解し、その壁を越える「コミュニケーション力」はグローバルビジネスシーンにおいては必須であり、カギとなる部分である。
現地で法人化する場合、このスキルを持つ人材の確保が重要となる。
3.手続きの複雑さ
ビザの手続き、法人設立の手続き、保険、法人口座設立、税務申告、オフィス賃貸手続き、住居探し・不動産手続きなど、海外企業が日本で法人設立するにあたって通らなければならない書類作業の壁は大きい。
各都市のスタートアップサポートオフィスなどでは相談窓口が設けられており、そこでサポートを受けることはもちろん可能であるが、それぞれ違う窓口に個別に連絡をして、書類を自分で用意して持参して…という作業を繰り返さなければならないことも多く、この時点で、何を誰に聞いて、どうすれば良いのかと途方に暮れてしまう人も少なくない。「ここまではやりますよ。あとは自分でやってくださいね。」という中で「伴走者」がいないという課題である。
これらの壁にぶつかった海外企業は、途中で「迷子」になってしまうこともあり、せっかく長い期間を乗り越えて日本で起業に成功したとしても、1年、2年、日本に滞在した後、撤退してしまう企業もある。
海外スタートアップは、日本進出を試みる前にこういう課題があるということを知っておくこと、それについての対応策を持っていることは大切なことと考える。
日本で法人設立したアメリカ人の知人の例
今回、実際、日本で法人化をしたアメリカ人の知人に起業プロセスがどうであったか聞いてみた。 (大阪で法人設立|コンテンツ業界|日英バイリンガル)
Q.何ビザを取得している?
私は初め「文化活動ビザ」から始まり、「スタートアップビザ」に移行した後、現在は「経営・管理ビザ」の取得に至りました。
父は1991年に「経営・管理ビザ」を取得し、私たちは家族全員で日本に来ました。
私と父のビザ取得歴は日本史上初めてのケースかもしれません(笑)。
つまり、私の幼少期+成人=6つのビザを日本で取得したことになります。
Q.日本で法人化するプロセスで難しかったことトップ3は?
1.ビザと会社登録のスケジュールの同時進行
ビザ申請手続きと会社登記はほぼ同時に行われ、多くの場合、要件が重複するため、管理が厄介です。
2.オフィス賃貸のタイミング
オフィス賃貸の確保(「経営・管理ビザ」の発行にオフィス賃貸は必要条件)はビザ申請のために必要ですが、会社登記が完了していないと家主は躊躇するかもしれません。このタイミングをうまく調整するのは難しいので、「経営・管理ビザ」と会社登記をスムーズに調整するために、「スタートアップビザ」で日本に滞在することは非常に有益です。
個人で賃貸住宅を借りる場合も同様で、自分に合った物件を探す時間を十分に持ち、海外の学生や社会人向けの理解の良い賃貸業者を見つけ問い合わせることをおススメします。
3.専門家の関与
スタートアップビザの手続きにおいては、行政書士やバイリンガルの現地弁護士と協力し、経営・管理ビザが取得でき法人銀行口座の開設が完了したら、税理士に依頼するのが賢明です。これらの専門家は、事前に詳細や説明が十分でないことが多いプロセスにおいて、物事を理解し明確にするのに役立ちます。
全体の感想と知人からのアドバイス
手続きを進めるにつれ、予期せぬステップやルールに遭遇しながら学び、適応していくことになります。圧倒されるように感じるかもしれませんが、日本で十分な時間を確保することで、プロセスは管理しやすくなります。各地域のスタートアップ・オフィスは、外国人申請者それぞれのユニークなニーズに適応するため、信じられないほど親切で、継続的に改善しています。
そのプロセスは都市によって異なり、より多くの英語サポートを提供している地域もあります。全体的に、このプロセスは時に起業家が独自に問題を解決することを要求し、私たちは直接、あるいは電話で答えを見つけに行くことを要求されます。すべての問題に対応できるメールアドレスがあるわけではないし、オンラインで公開されている英語の情報が完全な状況ではないかもしれません。しかし、私はこの挑戦は新しいスタートアップ企業にとって貴重なステップだと考えています。ビザの手続きをうまく進めることで、日本でのビジネス口座の開設や個人会員権の取得など、他の仕事に対する自信と準備が生まれるからです。
実績のある海外企業であれば、有償ですべてをアウトソーシングすることも可能でしょうが、若いスタートアップ企業は、より多くのことを自分たちでこなさなければならない。
全面的なサポートを希望する場合は、40~50万程度の費用で、行政書士や移民弁護士、税理士を雇うのも良いオプションだと考えます。
ビザを取得し、会社を立ち上げることは、人生において最も重要でストレスの多い経験の一つであり、外国でそれを行うことは、感情的なチャレンジが加わります。なので、このプロセスを信頼し、日本で接することになるすべての新しい都市やスタートアップ関係の人達と接したり仕事をする際には、自分のビジネスについて明確かつ具体的に説明するようにしてください。
私はどの段階でも、寛大で親切な人々にたくさん出会いました。
できる限り自分に時間の猶予を与えて、一歩一歩、成し遂げてください。
日本のスタートアップエコシステムの成長に向けて
海外のスタートアップや企業を誘致するにあたっては、日本は受け入れ体制の部分で、まだ解決すべき課題が沢山ある。
一人でも多くの海外優良企業が、優秀な人材が、日本でビジネスを行えるよう、
これらの課題に取り組んでいくことは重要である。
STARTUPPERSでも、スタートアップエコシステムの課題解決に取り組むスタートアップサポート機関や会社や人を取材し、海外に伝え、繋いでいきたいと思う。
Article credited to STARTUPPERS
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